
●中野亜里の逝去
2021年1月9日午後2時40分、中野亜里(なかの・あり=大東文化大教授、ベトナム政治外交史)、がん性腹膜炎のため札幌市の病院で死去、60歳。大津市出身。
2021年1月11日午後5時~偲ぶ会、1月12日午前10時半~お別れの会の実施。
川根眞也は、中野亜里(現代ベトナムの政治と外交、大東文化大学教授、2021年1月 9日死去)と 30年間連れ添った事実婚でした。現行家族法では、事実婚カップルでは生前に離婚した場合、財産分与が認められていますが、死亡により離別した場合には相続権が一切法的に認められていません。
川根眞也は、亡き中野亜里の葬儀費用や大学の研究室に所有されていた 1200冊を超える蔵書および研究資料をマンションに運び出し、中野亜里の研究成果を次世代に引き継ぐための資金にするため、中野亜里の死後、預金から 1750万円を引き出しました。
ところが、中野亜里の法的相続人である中野亜里の実の妹、中野●●は、「法的相続人は私一人であるから、遺産は全額私のものである」「川根眞也が預金口座から引き出した 1750万円を全額、私に返金せよ」と 2022年 3月 17日に川根眞也と神戸地裁に訴えました。
2021 年 8月 11日神戸地裁に仮差し押さえ命令を申し立てしました(同年8月17日神戸地裁仮差し押さえ決定)。これに対して、川根眞也は 2023年 9月14 日反訴しました。
その概要は以下です。
(1)中野亜里がのこした遺言書は印鑑がなくとも、亡き中野亜里の真意を表したものであり、有効である。
(2)中野亜里の残した遺産 6056万 3068円の半額は夫婦別姓でその最期まで添い遂げた、川根眞也のものである。
(3)原告中野●●は川根眞也の代理人弁護士、紀藤正樹氏との和解協議中であるのも関わらず、亜里名義の銀行口座を管理し、当方の諒解なく引き出し、不当利益を取得した。
(4)中野亜里の残した遺産 6056万3068円の半額 3028万 1534円から川根眞也が引き出した1750万円を差し引いた 1278万円 1534円について、不当利益変換請求をする。
(5)中野亜里と川根眞也が生活していた埼玉県川口市のマンションを原告中野●●は仮差し押さえをした。このマンションについて、所有権を川根眞也に移転登記続きをせよ。
原告 中野●●側は「亜里は夫婦同姓に反対していた」というこちら側の主張に反論して、「亜里が夫婦同姓に反対するだけならば、婚姻しても旧姓を通称名として使用すればよく」と主張しています。また、「亜里が婚姻を選ばなかったのは、男女の自由な協力関係を望んでおり、関係性を法的に拘束されることを嫌ったからである」「亜里が婚姻制度を選択しなかったにもかかわらず、その死後の財産について財産分与規定を類推適用することは、亜里の意思に反する」と主張しています(前回 原告 中野●●第4準備書面)。
今回の第8回口頭弁論では、「原告は、また、『亜里が夫婦同性に反対するだけならば、婚姻しても旧姓を通称名として使用すればよく、婚姻関係を選択しない理由にならない。』とも述べるが、この夫婦別姓の問題について、余りにも理解を欠く主張と言わざるを得ない。原告代理人は、改めて、この点に関する過去の裁判例における当事者の主張や日弁連その他の弁護士会の意見書等に目を通すべきであろう。」と反論します。
原告中野●●側は、あまりにも女性側だけが結婚の際に、氏(うじ)を変えていることの社会的弊害を過小評価し理解していません。
中野亜里は川根眞也と結婚する際に、氏(うじ)を変えたくないと言いましたが、その理由は、それまで書いてきた論文や本の氏名が中野亜里(Ari Nakano)であり、結婚で「川根亜里( Ari Kawane)」に変わってしまうとすべて別人の業績になってしまうこと。中野亜里は 1991年 1月に結婚する以前にも、ベトナムを度々訪問していましたが、ベトナムでは通称名は通用せず、ホテルを予約した際に誤って通称名を使ってしまうと、「このパスポートの名前と予約した名前と違う」と泊まれなくなること。の 2つを理由にあげていました。婚姻と同時に氏(うじ)を変えることは、パスポートからクレジットカード、預金通帳等々の様々変更を余儀なくされ、海外出張等では様々な余計な労力をかけることになることは、選択的夫婦別姓制度の導入を目指している、サイボウズの代表取締役青野憲久さんも書いていることです。
2025年2月21日、神戸地裁、河本寿一裁判官は、原告の中野●●の主張を全面的に認め、中野亜里が書いた遺書の有効性を否定、川根眞也への遺贈分も否定し、相続権ゼロの不当判決を出しました。この判決では、今から25年前の最高裁判決を持ち出し、その内容を精査、評価することなく「以上から、夫婦同姓の法律婚制度の合憲・違憲にかかわらず、事実婚夫婦が死別した場合に財産分与規定を類推適当する余地はなく」と書いています。
2025年3月、川根眞也はこの神戸地裁判決に対して、控訴しました。
この中野亜里・川根眞也の30年にわたる事実婚夫婦、相続権ゼロ違憲訴訟に注目して、ご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。